いま見てきた4つのこと
- シーン1
最終的に儲かる ≠ 途中を必ず乗り切れる
この店は3か月目には帳簿上で利益が出ますが、お金が全部戻るのは19か月目です。そのあいだ、いちばん深いときで ¥362,400 のマイナスです。
- シーン2
速く広げる ≠ 現金のリスクが低い
2店を同時に開くと、レジのお金は最低 ¥36,080 まで減り、立ち上がりが2倍遅いだけで底をつきます。段階的に開けば遅くはなりますが、余裕は厚くなります。
- シーン3
すでに使ったお金 ≠ 今日さらに投資する理由
その ¥180,000 を両方に足しても、差はまったく変わりません。やめる理由にもなりません。
- シーン4
回収がいちばん速い ≠ 長期の価値がいちばん大きい
A は12か月目、B は31か月目に回収。52か月目に B が逆転し、5年の合計は ¥240,000 対 ¥348,000 です。
それぞれの名前
資金ランウェイ · Cash Runway
なぜ?
新しい店が安定して稼ぐようになるまで、会社はお金を立て替え続けなければなりません。その立て替えるお金が「ランウェイ(滑走路)」です。シーン1では ¥362,400。「乗り切れるか」の話で、「儲かるか」の話ではありません。(Runway はもともと「いまのペースで手元のお金があとどれだけもつか」を指します。ここではその直感を借りています。)
埋没費用 · Sunk Cost
なぜ?
すでに使っていて、今日どう選んでも変えられないお金です。2つの選択肢の両方に同じだけ入るので差は変わらず、続ける理由にすべきではありません。ただし「過去はどうでもいい」という意味ではありません。過去に得た情報(たとえば新しい客足のデータ)は使い続けます。
投資回収期間 · Payback
なぜ?
稼いで戻ってきた現金の累計が、最初に投じたお金を埋め合わせる月です。シンプルで直感的、リスクも見えます。回収したあとにどれだけ稼げるかは見えません。
この回で少しだけ触れた言葉が、あと2つ
限界利益 · Contribution Margin
1杯多く売ると、増えた売上からその1杯分の材料費を引いて ¥12 が残ります(シーン1の任意パート)。これは利益ではありません。まず家賃や人件費のような、売れても売れなくても払うお金を賄います。1日 98 杯でちょうど賄える(この点を損益分岐点 Break-even といいます)。さらに減価償却を引いて、残りがようやく利益です。
NPV の直感 · 正味現在価値
あとで受け取るお金を「今日ならだいたいいくらか」に換算することを割引計算、換算の速さを割引率といいます(シーン4の任意パート)。すべての現金を今日の価値に換算して足し合わせ、比べるのが正味現在価値です。結論は割引率という仮定しだいで、シーン4では約 11% のとき2つの案が同じになります。式はまた今度。
Finance 03 · この回のまとめ
帳簿上の利益、現金の回収、長期の価値は、3つの別々の問いです。次の回では、どんな会社を詳しく調べる価値があるかを見ます。
次の回 · Finance 04 · はじめての M&A スクリーニング →この回だけでは言えないこと
- 税金も、借入も、利息もありません。現金の不足を何で埋めるかは、別のテーマです。
- 新しい店が失敗することはなく、2店がお客さんを奪い合うこともありません。新しい店を2つ同時に運営する難しさや、賃貸借契約の会計処理も入っていません。
- 運転資本はごく小さいものとして扱っています(店頭はその場で支払い、在庫も少ない。Finance 02 で見たとおり)。
このページの概念
概念を開くと、中国語・日本語・English の対応と説明を確認できます。
現金詳しく見る
- 中文
- 现金
- 日本語
- 現金
- English
- Cash
その時点で支払いに使えるお金の残高。一定期間のキャッシュフローとは区別します。
利益詳しく見る
- 中文
- 利润
- 日本語
- 利益
- English
- Profit
一定期間の収益から対応する費用を引いたもの。このシリーズの簡略モデルは利息と税金を扱いません。利益が常に EBIT と同じとは限りません。
資本的支出 CapEx詳しく見る
- 中文
- 资本性支出
- 日本語
- 資本的支出
- English
- Capital expenditure (CapEx)
長期使用する資産の取得・改良への支出。支払いは現金に影響し、費用は通常、減価償却などで使用期間に配分されます。
このページの例:二店目の内装工事と設備購入のために支払った投資。
減価償却詳しく見る
- 中文
- 折旧
- 日本語
- 減価償却
- English
- Depreciation
固定資産の償却対象額を使用期間に配分すること。償却費の計上時に再び現金を払うわけではありません。
利払前・税引前・減価償却前利益 EBITDA詳しく見る
- 中文
- 息税折旧摊销前利润
- 日本語
- 利払前・税引前・減価償却前利益
- English
- Earnings before interest, taxes, depreciation and amortization (EBITDA)
EBIT に減価償却費などを足し戻した指標。入金時期、在庫、設備投資も現金に影響するため、キャッシュフローとは異なります。
資金ランウェイ詳しく見る
- 中文
- 现金跑道
- 日本語
- 資金ランウェイ
- English
- Cash runway
通常は現在の現金で何か月事業を維持できるか。Finance 03 では開店時の必要資金を考える直感として使いますが、金額と期間は異なります。
埋没費用詳しく見る
- 中文
- 沉没成本
- 日本語
- 埋没費用
- English
- Sunk cost
すでに発生し、今後の選択で変えられない費用。案の比較では今後の差分に注目します。
投資回収期間詳しく見る
- 中文
- 回本期
- 日本語
- 投資回収期間
- English
- Payback period
累積キャッシュフローで初期投資を回収するまでの期間。回収後の利益は表しません。
このページの例:シーン1:19か月目に投じた現金を回収。
限界利益詳しく見る
- 中文
- 边际贡献
- 日本語
- 限界利益
- English
- Contribution margin
売上から変動費を引いた額で、まず固定費を賄います。金額と売上に対する比率を区別します。
損益分岐点詳しく見る
- 中文
- 盈亏平衡点
- 日本語
- 損益分岐点
- English
- Break-even point
対象とする費用を売上がちょうど賄う水準。現金支出の営業費用と、減価償却を含む費用では水準が異なります。
割引計算詳しく見る
- 中文
- 折现
- 日本語
- 割引計算
- English
- Discounting
将来の現金を現在の価値に換算すること。時期と割引率で結果が変わります。
正味現在価値 NPV詳しく見る
- 中文
- 净现值
- 日本語
- 正味現在価値
- English
- Net present value (NPV)
初期投資を含む各期の純キャッシュフローを現在価値に割り引き、合計します。